《挪威的森林》(15)
「なんでも良かったんだよ、僕の場合は」と僕は説明した。「民族学だって東洋史だってなんだって良かったんだ。ただたまたま演劇だったんだ、気が向いたのが。それだけ」しかしその説明はもちろん彼を納得させられなかった。
「わからないな」と彼は本当にわからないという顔をして言った。「ぼ、僕の場合はち、ち、地図が好きだから、ち、ち、ち、地図の勉強してるわけだよね。そのためにわざわざと、東京の大学に入って、し、仕送りをしてもらってるわけだよ。でも君はそうじゃないって言うし……」
彼の言っていることの方が正論だった。僕は説明をあきらめた。それから我々はマッチ棒のくじをひいて二段ベッドの上下を決めた。彼が上段で僕が下段だった。
“我什么都喜欢,”我解释道:“什么民族学呀、东洋史,我通通喜欢。只是有时会比较喜欢戏剧,如此而已。”不过,这段说明自然说服不了他。
“我还是不懂,”他确实是一副不解的表情。“我……我喜欢地……地图,所以才念地……地理,所以才专程到东京来上大学,要家人寄钱给我用。可是你又是不一样的动机……”
其实他的动机才是正确的。但我已经懒于解释了。之后,我们便将火柴棒折成两段来决定上下。结果他睡上,我睡下。
彼はいつも白いシャツと黒いズボンと紺のセーターという格好だった。頭は丸刈りで背が高く、頬骨がはっていた。学校に行くときはいつも学生服を着た。靴も鞄もまっ黒だった。見るからに右翼学生という格好だったし、だからこそまわりの連中も突撃隊と呼んでいたわけだが本当のことを言えば彼は政治に対しては百パーセント無関心だった。洋服を選ぶのが面倒なのでいつもそんな格好をしているだけの話だった。彼が関心を抱くのは海岸線の変化とか新しい鉄道トンネルの完成とか、そういった種類の出来事に限られていた。そういうことについて話しだすと、彼はどもったりつっかえたりしながら一時間でも二時間でも、こちらが逃げだすか眠ってしまうかするまでしゃべりつづけていた。
平日他总是穿着白衬衫、黑长裤,再套上一件蓝色毛衣。小平头、高个子、高颧骨。到学校上课时则穿学生制服。鞋子、书包一律全黑,看上去倒是一副十足的右派学生打扮。所以说,他对政冶是百分之百的没兴趣,尽管大伙儿给他起了个浑名叫“突击队”。他之所以老是穿同一套衣服,也是因为懒得挑衣服穿的关系。他只关心海岸线的变化啦、新铁路隧道完工等等这类的新闻事件。只要一谈起这方面的话题,他就会一面口吃、一面咿咿呀呀地谈上一、两个钟头,直到你想逃跑或打瞌睡为止。
毎朝六時に「君が代」を目覚し時計がわりにして彼は起床した。あのこれみよがしの仰々しい国旗掲揚式もまるっきり役に立たないというわけではないのだ。そして服を着て洗面所に行って顔を洗う。顔を洗うのにすごく長い時間がかかる。歯を一本一本取り外して洗っているんじゃないかという気がするくらいだ。部屋に戻ってくるとパンパンと音を立ってタオルのしわをきちんとのばしてスチームの上にかけて乾かし、歯ブラシと石鹸を棚に戻す。それからラジオをつけてラジオ体操を始める。
而每天早上的“我皇治世”则是他的闹钟,只要一听见,他就起床。这么看来,那堂堂皇皇、煞有介事的升旗典礼倒也不是完全没有价值。起床之后。他便穿上衣服,然后到盥洗室去刷牙洗脸。一开始刷牙洗脸,总是非大半天不肯出来。教人忍不住要怀疑他会不会是把牙齿一颗颗拔下来洗。好不容易回到房里,“帮!帮!”几声扯平毛巾的皱褶,将它摊放在暖气孔上烘干,跟着又把牙刷和肥皂放回架子上,之后便扭开收音机开始做起收音机体操来。